ユダヤ式記憶術で使う「生命の樹(セフィラ)」とは何か?成り立ちから理解する
ユダヤ式記憶術の核となる「生命の樹」。
初めて名前を聞くと「宗教っぽいなあ」と思う方も多いんじゃないかと思います。私(早野悟)も、最初はそう思いました。
でも実際に使ってみると、これは宗教的な意味合いはまったくない、純粋な「知識整理のテンプレート」ということがわかります。ここでは、ユダヤ式記憶術で使う「生命の樹」がどういう成り立ちを持つ図式なのか、掘り下げてご説明いたします。
生命の樹の由来(カバラ思想と記憶術の関係)
「生命の樹」は、ユダヤ教の神秘主義思想であるカバラに登場する図です。10個の「セフィラ」と呼ばれる要素が、樹木のような構造でつながっている図式です。

ユダヤ式記憶術は、この図式を「知識を整理するテンプレート」として使用しています。宗教的な信仰や実践は一切関係がありません。
実は、こうした神秘思想の図式を、記憶術に応用するという発想自体は、目新しいものではないんです。記憶術の歴史をひもとくと、中世ヨーロッパでは、キリスト教神学や占星術、カバラ思想を、知識を体系立てて記憶するための「型」として、当たり前のように使われていました。
ただ、こうした知的な歴史がほとんど知られていないだけなんですね。
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ラモン・ルルの「学問の樹」との類似性
ユダヤ式記憶術のように「タンプレートで覚える」ということと関連して、興味深いのは、13世紀の修道士ラモン・ルルが考案した記憶術に、「学問の樹(ルルの輪)」というテンプレートがあることです。

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ラモン・ルルの記憶術では、「神の品格」と呼ばれる9つの概念をテンプレーに使用しています。このテンプレによって知識を分類・整理しています。ユダヤ式記憶術の「生命の樹」とはデザインは異なりますが、構造としてはよく似ているんですね。

ユダヤ式記憶術が、ラモン・ルルの記憶術を参考にしたのかどうかはわかりません。しかし「テンプレートに知識を当てはめて整理する」という記憶術の手法が、何百年も前から存在していたということは、知っておいて損はないと思います。
ユダヤ式記憶術のテンプレート型学習が有効な理由
ここで少し、「なぜテンプレートを使うと覚えやすくなるのか」について考察してみます。
人間の記憶は、バラバラの情報よりも、構造化された情報のほうが定着しやすいとことがわかっています。このことは、既にある「枠組み」に情報を当てはめることで、脳が情報同士のつながりを認識しやすくなるからといわれています。
実際、初めて訪れた街の道を覚えるときは、目印となる建物や交差点があると覚えやすいですよね。生命の樹も、これと同じような「目印」の役割を果たしているんですね。
ただし、テンプレートを使うだけでは不十分です。「知識同士の関係性(因果関係、対立関係、時系列など)を意識しながら当てはめる」という一手間が、記憶の定着を左右します。ここが、ユダヤ式記憶術の肝の部分になります。
「生命の樹」と他の思考整理フレームワークとの違い
ユダヤ式記憶術の「生命の樹」をより深く理解するために、他の思考整理の手法と比べてみましょう。似ているようで、実は発想がけっこう違うことがわかると思います。
マインドマップとの違い

マインドマップは、中心となるテーマから放射状に枝を伸ばして情報を整理する手法です。自由な発想の広がりを重視するのが特徴ですね。
一方、生命の樹は、あらかじめ決まった構造(10個のセフィラと、その位置関係)となっています。ここに知識を「当てはめていく」という発想ですね。
自由に広げるマインドマップと、型に整理していく生命の樹。方向性は真逆になっています。
ロジックツリーとの違い

ロジックツリーはビジネスの現場でよく使われます。上位概念から下位概念へ、モレなくダブりなく分解していくことを重視する手法です。
生命の樹は、ロジックツリーのような「上下の分解」だけでなありません。セフィラ同士の横のつながり(対立関係、均衡関係など)も含めて整理する点に特徴があります。
つまり縦だけでなく横の関係性も扱っています。ですのでロジックツリーよりも複雑な知識の体系化が可能になっています。
場所法(記憶の宮殿)との違い

場所法は、実在する(または想像上の)空間に記憶したい事柄を配置していく手法です。視覚的なイメージを頼りに、大量の項目を機械的に記憶するのが得意な手法なんですね。
生命の樹は、視覚的なイメージよりも「知識同士の論理的な関係性」を頼りに記憶するという点が、根本的に異なります。だからこそ、場所法が苦手とする「意味を伴った暗記」に強いんですね。
このあたりの違いは、記憶術全体の比較でもくわしくまとめていますので、あわせてご覧ください。
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「生命の樹」に知識を当てはめる8つのポイント
生命の樹に知識を当てはめていく際、意識するとよいとされる「関係性」のポイントがいくつかあります。それは以下の通りです。
- 時系列の関係
- 順番
- 原因と結果の関係
- 前提条件の有無
- 前後関係
- 対立関係
- 均衡関係
- 発展関係
この8つのポイントを覚えておくと、生命の樹を活用する際、役立ちます。
しかも生命の樹以外の場面でも役立ちます。たとえば文章を要約するときや、資料を作るときにも、「これは原因と結果の関係かな」「これは対立する事柄かな」と意識することで、頭の中の整理がグッとしやすくなります。
ユダヤ式記憶術は、この「関係性を見つける力」そのものを鍛える記憶術ともいえます。
生命の樹の「パス(小径)」~発展的な使い方
ユダヤ式記憶術のマニュアルは、バージョンアップを重ねています。ver1.31以降からは「パス」と呼ばれる発展的な使い方が追加されています。
パスとは、10個のセフィラをつなぐ「小径」のことをいいます。この「パス(小径)」を使うことで、従来の10個のセフィラでは表現しきれない、より複雑な知識の関係性を扱えるようになっています。
パス(小経)は、占星術やタロットカードの体系とも重なる部分があります。そのためオカルトっぽく感じるかもしれません。ですが、あくまで「知識を整理するための座標軸が増える」という捉え方になりますね。これは生命の樹と同じです。
ちなみに、占星術の図式を記憶術に応用するという発想が、紀元前3世紀の哲学者メトロドロスの時代からすでに存在していました。
したがってユダヤ式記憶術のパス(小経)は、目新しい発想というより、記憶術の長い歴史の延長線上にあるテクニックということもわかります。
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パスの詳しい使い方は、著作権保護の関係で当サイトでは詳細を明かせませんが、気になる方は公式のマニュアルをご確認ください。
生命の樹を使いこなす人がやっている3つの習慣
最後に、生命の樹を実際に使いこなせるようになった人に共通する習慣を、3つご紹介します。
- セフィラの意味を「完璧」ではなく「大枠」で覚えている
細部にこだわりすぎず、代表的な意味をまずつかんでいます。 - 自分の手で生命の樹を何度も書いている
読むだけでなく、実際に手を動かして図を描く練習を重ねています。 - 得意なジャンル(歴史・法律など)から使い始めている
最初から万能に使おうとせず、相性のよい分野で成功体験を積んでいます。
この3つ、地味に見えるかもしれません。ですが、実はどの記憶術にも共通する「習得の王道」でもあります。
具体的な学習ステップやつまずきへの対策は、こちらの記事でより実践的にご紹介しています。
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まとめ|生命の樹は「知識の座標軸」
以上、生命の樹の成り立ちから、他の思考フレームワークとの違い、発展的な使い方までご説明してきました。
生命の樹は、宗教的な図式というより、知識を整理するための「テンプレート」として捉えるとしっくりくると思います。
マインドマップのように自由に広げるでもなく、場所法のように視覚的に配置するでもなく、知識同士の「関係性」を軸にして体系立てていく、それが生命の樹の一番のユニークさなんですね。
歴史的な系譜を知っていただくと、「怪しい」という印象も払拭できるのではないかと思います。ユダヤ式記憶術は、記憶術の長い歴史の中に、きちんと位置づけられる手法になります。
⇒ユダヤ式記憶術の公式HPはこちら


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